中医学と漢方

最近では生理痛対策に漢方が良いとの評判が高くなってきているようですが、それでも基本的に西洋医学が主流となっている今の日本では、漢方を扱う医師は比較的少なく、興味があっても実際に訪れる患者さんもそう多くはありません。
また、「西洋医学を利用するか、漢方を利用するか」といった二者択一的な考えをする人もまだまだ多いようですが、実はこの2つ、全くことなった考え方のもとに成り立っている医学なので、それぞれに長所があり、「どちらが優れている」というものではないのです。

西洋医学とは、症状の原因となっている臓器を修復する為に、症状に直接作用する薬を投与したり悪いところを切除したりといった、臓器別に医術を施すことを基本としています。
それに対し漢方は、人の体が持つ自然治癒力を高めることで体全体をベストな状態にすることを基本としています。
ですから例えば悪性腫瘍が見つかれば、西洋医学で切除し治療する方が良いでしょう。
漢方でのんびり様子を見ていると手遅れになってしまうかもしれません。
しかし生理痛などの血行やホルモンバランス、ストレスなどが関係した、西洋医学的に見て原因がはっきりとしない疾患の場合、漢方で体質そのものを改善する方が、即効性には劣っても長期的な解決策としてはより勝っているわけです。

特に生理痛という分野は、漢方にとっていわば「得意分野」ですから、利用してみる価値はあります。
また、西洋医学と漢方それぞれの得意分野を活かして、うまく併用することでより大きな効果も期待できるのです。

血液やエネルギー、気が不足している為に生じる生理痛のことを、中医学では「不栄則痛」と呼びます。
そしてこの「不栄則痛」も、何が不足しているかで更に細かく種類分けされています。
元気が不足することで起きる場合を「気虚通」、血液が不足することで起きる場合を「血虚通」と呼びますが、結局「気」と「血」は密接に結びついているので、片方が不足すればもう片方も不足することになりますから、大抵の場合両方不足している「気血両虚」が生理痛の原因となっています。

「気血両虚」は食生活の不摂生や過労、ストレスなどによって消化・吸収力が低下したり、慢性病による消耗や怪我などによる血液の不足で臓腑の機能が衰えたりすることで生じます。
症状としては、下腹部の重い痛み、顔色や肌色が悪い、頭痛、ふらつき、動悸、眩暈、疲労感といったものが挙げられます。
胸の痛みや下腹部の痛みは、おさえたり温めたりすると楽になるという特徴もあります。

この気血両虚の場合に処方されるのは「十全大補湯」という漢方が代表的で、これは生理痛だけでなく虚弱体質にも効果があると言われています。

中医学によると「不通則痛」に分類される生理痛の原因には、気(感情)の乱れ「気滞痛」の他に、血液の滞り、また冷えによって起こるものに分けられます。
血液の滞りが原因となる生理痛を「血瘀痛」と呼び、冷えが原因となる生理痛を「寒痛」と呼びます。

「血瘀痛」は「気滞痛」であるストレスや鬱の他、冷えや打撲など様々な原因で血行が悪くなって起こります。
症状としては、生理前から下腹部のある一定の箇所に鋭い痛みがあり、抑えると塊に触れることもあります。
また頭痛や腰痛、胸苦しさ、口の渇き、肩や首の凝り、冷えのぼせ、シミ・そばかすができるといったことも症状として現れます。
更に舌が紫色になったり赤黒い斑点が現れたりすることもあるようです。
この「血瘀痛」の場合に処方される漢方としては「桂枝茯苓丸」が代表的です。

「寒通」の場合、症状としては生理前から下腹部の両側が張ると同時に痛み、冷やすと更に痛みがひどくなります。
また生理中は絞るような痛みがあったり、顔色が悪く、むくみや関節痛、下痢といった症状もあったりします。
寒通の場合には「附子人参湯」という漢方がよく処方されるようです。

中医学による生理痛の分類は、大きく分けて血液や感情の乱れ、滞りによって起こる「不通則痛」と、そもそも血液や栄養などが不足している為に起こる「不栄則痛」の2つに分けられますが、この「不通則痛」の中でも滞っている要素によって細かく分けられています。
それぞれの症状によってどの部類に属する生理痛なのかを見極め、その原因を排除しながら気や血液の流れを良くし、体質を変えていくのが漢方治療の考え方です。

不通則痛の1つは「気滞痛」で、これは感情の乱れやうつ滞が原因になっているものです。
感情が不安定で躁鬱になったり、ずっと鬱の状態が続いていたりすると、肝機能が弱まって生じる「肝鬱気滞」の生理痛が生じます。
症状としては下腹部や胸の張りと痛み、イライラ、ゲップやおならが出やすい、ストレスが溜まりやすい、胸苦しさといったものの他に、経血の色が暗く血の塊が混じっていたり、月経周期も不規則で経血の量も一定しなかったりといった特徴があります。

この気滞痛による生理痛の場合に処方される漢方としては、「加味逍遥散」が代表的です。

生理痛に限らず、疾患の治療の為に漢方を利用する人が増えています。
というのも、漢方は他の西洋医学と違って、人の体が本来持っている自然治癒力を高めて治療を促す考え方であるため。
つまり体の潜在能力を引き出すだけなので、体に悪影響を与える副作用の心配がないのです。
今では産婦人科などでも生理痛緩和に漢方を取り入れている病院もあるようです。

漢方によると、生理痛の原因は2つのタイプに分けられます。
1つは感情や血液が乱れることで流れが悪くなっている「不通則痛」、もう1つは血液やエネルギーが不足し、栄養分が十分行き渡らないことで起こる「不栄則痛」です。
分かりやすく言い換えると「不通則痛」は滞っている状態、「不栄則痛」は足りない状態と言えるかもしれません。
具体例を挙げると血行は悪い、冷え性、ストレスなどが「不通則痛」、エネルギー不足、栄養不足、貧血が「不栄則痛」です。

ですから生理痛対策に漢方を利用するのであれば、まず自分がこの2つのうちのどちらのタイプなのかを把握しなければなりません。
それぞれには特有の症状がありますから、医師に症状を伝え、相談した上で利用するようにしましょう。